【導入事例】新卒エンジニアの早期戦力化を実現した、
コベルコシステムの研修内容とパートナー・教材活用とは

コベルコシステム株式会社
(左から) 山中様 島田様 幸田様
神戸製鋼所の情報システム部門として1983年に創立され、2002年に日本IBMとの資本提携を経て成長を続けるコベルコシステム株式会社様。「Be a Trusted Partner」という長期ビジョンのもと、日本IBMのITノウハウと神戸製鋼所のものづくりへのこだわりを融合させ、お客様に寄り添ったITサービスを提供されています。
近年、IT業界全体で課題となっている新卒エンジニアの早期戦力化に対し、同社は独自の新人研修プログラムを展開されています。特に注目すべきは、内定者教育から入社後の新人研修まで、外部パートナーを効果的に活用した包括的な育成アプローチです。
今回は、コベルコシステム株式会社の人材開発グループご担当者様に、新卒エンジニアの早期戦力化に向けた取り組みの詳細と、GakkenLEAPの「Shikaku Pass Business」、Gakkenグループの人材育成会社「TOASU」の研修プログラムを活用した研修効果についてお話を伺いました。
文系エンジニアの早期戦力化が重要課題
人材開発グループの業務内容を教えて下さい
コベルコシステム キャリア開発センター 人材開発グループ担当課長 幸田まゆみ様(以下、幸田)

人材開発グループは、入社前の内定者から入社後の早期育成、ベテラン社員に至るまで、全社員の教育と育成を担当しています。 私達は特に内定時期から入社後2年間の早期育成を担当しており、現在は新人研修が終わったところですので、これから来年に向けて企画や振り返りを行っていく段階です。
新人エンジニアの教育に関して、どのような課題を感じますか?
コベルコシステム キャリア開発センター 人材開発グループ 山中大地様(以下、山中)

昨今のエンジニアの売り手市場を反映して、文系学生の入社が非常に増えています。新入社員研修では、そういった文系学生をゼロから教育していく点に課題を感じています。
そのため、文系学生でも理解しやすく、かつ現場配属後に即戦力となれるようにカリキュラムを構成しています。
さらに、エンジニア領域では日々知識のアップデートが必要なため、新入社員研修を自社内で完結することが困難になってきている点も課題となっています。
3ヶ月間の研修で、ビジネス基礎からプロジェクトの演習まで
全てやりきる内定~新入社員研修の流れを教えてください
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山中
内定者時代の課題も含めて、カリキュラムについて説明します。全部で5つの流れがあります。
- 基礎の習得:内定者時代に、ShikakuPassやオンライン教材を活用して基本情報技術者試験等のIT基礎の勉強、ビジネスマナーの基本を習得する
- 会社ルールの把握:入社後の初期段階で、当社独自のビジネスルールについて学んでもらう
- ビジネススキルの習得:ビジネスマナーや論理的思考など、社会人として習得すべきビジネススキルを学ぶ
- 開発演習:その後3ヶ月かけて具体的なITスキルの習得を行う。まずは基礎から始まり、実際のお客様訪問を想定した提案や開発演習まで一気通貫で実施。
- 成果報告会:最終日に、各配属先の上司を招いて成果報告会を実施。3ヶ月間の結果を報告する。
の3ヶ月間の新入社員研修では、TOASUさんと連携しながら進めており、受講者のメンタルケアも並行して行っています。
ITに触れたことのない学生から、IT分野を専攻してきた学生まで、どちらにとっても充実したプログラムになるようカリキュラムを構成しており、新人研修の手厚さは当社の強みだと考えています。
【4.開発演習】とは、具体的にどのような内容なのでしょうか?
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山中
具体的には、Javaを前提とし仮想のお客様を設定し、会議室予約サイトの作成依頼があったと想定した演習を行います。実際に要望をヒアリングしながら開発を行い、お客様に見ていただくという、実際の業務を想定したプログラムを組んでいます。
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実際に物を作るんですね
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山中
はい。成果物を作り、先ほど説明した成果報告会でそれを皆さんに見ていただきます。さらに、制作プロセスでの気づきや反省点、今後の業務に活かしたいことなどを発表してもらいます。これが開発演習の目的です。
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グループワークで取り組むんですか?
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山中
そうですね。3ヶ月間を通じて常にグループで活動しています。
チーム内でのリーダーシップの取り方も学んでもらいますし、仮想のお客様を相手に練習も行います。その中でビジネスマナーや議事録の書き方、メールの書き方、お客様とのコミュニケーション方法なども総合的に学びます。座学で学んだことを実践する構成になっています。
新入社員研修の中で特に心がけていることはありますか?
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幸田
新人研修は社会人としての基礎中の基礎です。どの部門に配属されても問題なく、当社の社員として恥ずかしくない第一歩を踏み出せるような、ベーシックな研修を心がけています。
現場特有の高度なスキルは各部門で教育してもらうようお願いしており、私たちは学生から社会人へのマインドチェンジや基礎的なスキルを、単に教えるだけでなく実際にできるようになるところまでを担当しています。
TOASU 担当取締役 大東智(以下、大東)

TOASUでは、3ヶ月間の研修を一つのプロジェクトと捉えています。ヒューマンスキルとテクニカルスキル、両方を醸成していく必要があるため、技術教育でありながらビジネスパーソンとして成熟していくような仕掛けを設けています。
コベルコシステムさんとは事前に綿密な打ち合わせを行い、大きなコンセプトをしっかり固めます。そのコンセプトに対してどうパフォーマンスを出していくか、定点観測しながら進めています。
例えば、相手目線や主体性といったコンセプトのもと、今の仕事は相手目線でできているか、プロジェクト内で自身のパフォーマンスを出せているかなど、いくつかの指標を設けています。3ヶ月間で自分がどう成長していくか、講師陣やクラスマネージャーを配置して、ビジネススキルとテクニカルスキル両面で能力を伸ばしていく形で実施しています。
学生・新入社員にはどのように接するようにしていますか?
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幸田
私たちは先ほど大東さんがおっしゃった研修のコンセプトに基づいて、すべきことはすべき、してはならないことはしてはならないという、社会人として当たり前のことを当たり前に伝えるようにしています。
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研修期間だからこそ、細かく指摘が出来そうですね
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幸田
そうですね。学生だった人たちなので知らないことがすごく多いんです。
悪気なく非常に失礼な言い方をすることもありますが、クラスマネージャーと連携しながら一つ一つ「まあいいか」で流さずに、実際にお客様のところに行ったときや、部門に配属されたときに困らないよう、細かいことでも指摘して直してもらうようにしています。 -
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「今は研修期間だから」という前提があるからこそ、聞き入れてもらいやすそうですね
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幸田
そうですね。受け取る側も、今は研修期間で指摘されるときなんだという意識があるので受け入れやすいようです。TOASUさんも配慮してくださっていて、良いところとセットで指摘するなど工夫をしていただいています。
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客観的に他者から指摘を受けながら、襟を正すいい機会になりそうですね
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幸田
TOASUさんとの研修では、テーマとして「内省」も取り入れています。自分を振り返って次に生かすということを、研修期間中に繰り返し行ってもらっています。
TOASUと考案した寺子屋形式支援で、メンタル面まで一人ひとり丁寧にフォロー
工夫をしても、人によっては研修についていけない人も出てくると思います。そのような方にはどのようなフォローを行っていますか?
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幸田
ShikakuPassを内定者の時期に受けて基礎の基礎を身に付けてもらった後、新入社員研修についていけない社員が出た場合、TOASUさんに相談して寺子屋形式で対応しています。IT講師にほぼマンツーマンで教育していただくこともあります。
寺子屋に参加することで、配属先部門が求めるレベルまでキャッチアップできています。
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寺子屋というのはTOASUの講師の方が受け手になってサポートしているということですね
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大東
そうですね。研修期間中にどうしてもレベル差が出てくるので、それを埋めるためにマンツーマンでフォローアップします。基本的に一定のレベルまで引き上げられるよう、講師と連携を取りながらカリキュラムを進めています。
現場から、「新人研修の間にもっとこうしてほしい」といった要求が来ることはありますか?
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幸田
率直に申し上げますと、一昨年までは、ITレベルが物足りないという声がありました。しかし、去年からTOASUさんに相談して寺子屋を導入したことで、現場が求めるITレベルまで引き上げることができました。その甲斐あって、去年はITレベルについてのクレームはありませんでした。
TOASUの新人研修カリキュラムについて、感想はありますか?
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幸田
TOASUさんとは2001年から20年以上お付き合いがあり、内定者研修からライン専門職向け研修まで幅広くお願いしています。弊社のことを非常によく理解してくださっているので、新しい提案やブラッシュアップの内容をいただけるのが非常にありがたいです。
コベルコシステム キャリア開発センター 人材開発グループ長 島田貴史様(以下、島田)

TOASUさんは研修を行うだけでなく、しっかりと振り返りや次年度へのフィードバックを行ってくださる、非常に誠実な会社だと思います。そのため、我々も信頼して少し言いにくいこともお伝えできますし、お互いに強いパートナーシップを築けていると感じています。これが非常に有効に機能していると思います。
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幸田
TOASUさんの講師陣は非常に頼りになり、品質が高く、レベルも非常に高いです。 このようなスキルを教える研修会社は多くありますが、TOASUさんの講師の方々は、自身がプロジェクトマネージャーやコンサルタントの経験を持つ方々も多く、実体験に基づく教訓を教えていただけるのが非常にありがたいです。
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講師の方はずっと変わらないのでしょうか?
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大東
研修内容によって様々な講師がいます。例えば階層別教育はこの講師、新入社員研修は別の講師に研修してもらうなど、担当を決めています。ただし、バラバラになると一貫性が失われるので、講師陣で密に連携を取り、一貫性を保つようにしています。常にお客様のニーズにどう応えていくかを意識しながら、長期的なお付き合いをさせていただいています。
TOASUから、何か研修プログラムについて補足などありますか?
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大東
TOASUの強みは、お客様の要望をしっかりとキャッチアップしてから研修に落とし込む点だと思います。例えば、コベルコシステム様の場合、現場からの要望でITスキルの底上げが一つ、そして直近ではメンタルサポートの強化も求められています。
今の時代、1〜2年で退職してしまう若手も少なくありませんが、コベルコシステムさんには採用した方を戦力として長く活躍してほしいという思いがあります。そのため、テクニカルスキルの向上とともに、マインド面のフォローにも力を入れています。
また、自立型人材の育成や主体性、相手目線といった要素も重視しています。これらのベースがないと、配属後も受け身になりがちで戦力になりづらいからです。こうした点の底上げにも特に注力しています。
7月の成果報告後はどのような取り組みを行っていますか?
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大東
新入社員の皆さんは事業部に配属され、各部門で専門的な技術教育を受けた後、現場で活躍されると思います。コベルコシステム様とは次年度の新入社員研修に向けて、まず7、8月に今年度の良かった点、改善点を振り返ります。同時に現場からの要望も吸い上げ、10月頃から次年度の研修の組み立てや方向性、コンセプトを固めていきます。今年度の研修が終わるとすぐに次年度の準備に入るような形です。
内定者研修にShikakuPassを活用することで、入社研修の導入がスムーズに
ShikakuPassの具体的な使い方を教えて頂けますか?
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幸田
内定者研修は入社前の秋に行われますが、そのときからShikakuPassなどのeラーニングを活用し、入社に向けた準備を進めてもらっています。入社までにShikakuPassを全て完了し、ITの基礎をある程度身につけた状態で新人研修に入ってもらうようお願いしています。
Gakken LEAPプロダクト開発グループ プロダクトマネジメント部 伊藤章浩(以下、伊藤)

ShikakuPassは個人向けにも提供していて、そちらでは若い方を中心に資格取得を目指す方が多いです。企業向けでは、人事担当者から基本情報技術者の体系的なカリキュラムとして評価いただいています。
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昨年の新入社員の方にもお使いいただいたと思いますが、内定者研修に活用することでなにか変化は感じられましたか?
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幸田
新人研修に入った後、IT講師から「昨年に比べて格段にベースができている」という声をいただきました。研修がスムーズに進められるようになったと感じています。
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大東
カリキュラムとの連動性という意味でも、昨年は新入社員研修で別のツールを使っていましたが、今年度は内定者の段階からShikakuPassを使用しているので、一貫性のあるカリキュラムを展開できました。そういう意味でも親和性が高かったと思います。
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ShikakuPassについて、現場からの評判はいかがですか?
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幸田
最近は非常に熱心な学生が多く、内定者の段階で「どんなことを勉強しておけばいいですか」という問い合わせが増えています。そういった時にShikakuPassを紹介すると、これをやっていれば研修についていける、入社後も大丈夫だという安心感を持って入社してもらえているようです。
ShikakuPassを完了することで、新人研修の立ち上がりも非常に早くなっているので、良い取り組みだと感じています。
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立ち上がりが早いというのは、IT理解度が一定以上あるということですね
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幸田
そうですね。JavaやITの基礎知識を持って入ってくるので、「これは何か」という基本的な説明から始める必要がなく、「これはこういうものです」と言えばすぐに理解して次に進めるんです。
専門用語の定義なども、ある程度理解した状態で受講できるので助かります。 -
大東
研修を実施する側としても、講師陣から好評です。ITの基礎ができた状態で研修を始められるので、ゼロからの教育に比べて進捗が全然違います。そのため、立ち上がりが非常に良く、実践的な内容にも早くシフトできるので非常に助かっています。
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幸田
ShikakuPass導入前は、「参考図書としてこの本で勉強しておくといいですよ」という程度の案内でしたので、入社後の知識レベルにばらつきがありました。ShikakuPass導入後は、全体的な底上げができ、ある程度そろったベースで研修をスタートできるようになりました。
ShikakuPassの強みや活用方法について教えて下さい。
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伊藤
ShikakuPassには、大きく三つの特徴があります。
一つ目は、何と言っても教材のわかりやすさです。学研グループならではの教育ノウハウを活かし、学習者にとってわかりやすく、内容が定着しやすい教材作りにこだわっています。
例えば、教材全体の構成はもちろん、アニメーションや図版の使い方、動画の再生速度まで細かく配慮しています。実際、現在ご利用いただいている学習者の方々へのアンケートでは、約9割の方から「わかりやすい」という評価をいただいています。
二つ目の特徴は、コツコツと手軽に学習を進められる点です。人事担当者の方々からよく聞くのが、社員が業務の傍ら学習する時間の確保が難しいという課題です。
学習時間が長すぎると、せっかく始めても途中で挫折してしまうケースも多いようです。そこでShikakuPassでは、スマートフォンで手軽に少しずつ学習を進められるようなサービス設計にしています。
例えば、コベルコシステムさんにもご利用いただいている基本情報技術者試験の講座は、他社の動画教材だと40時間程度かかるところを、ShikakuPassではその半分の時間で学習できます。問題集も、プロの監修のもと厳選した内容を4分の1程度に圧縮して提供しているので、初学者でもしっかり取り組める内容になっています。
また、1本あたり5分程度の短い動画を見た後、学習内容の定着を促す問題や解説動画を用意するなど、効率的な学習ができる構成になっています。
三つ目の特徴は、法人のお客様向けに、人事担当者や研修担当者が各社員の学習進捗状況を簡単に確認できるダッシュボードを提供していることです。
コベルコシステムさんには現在、基本情報技術者試験の講座をご利用いただいていますが、今後は応用情報やさらに発展的なベンダー系の資格など、ラインナップを拡充していく予定です。これによって、コベルコシステムさんの人材育成にさらに貢献できればと考えています。
新人教育を含めた早期育成がIT業界ではカギになる
最後に、今後の展望について教えていただけますでしょうか?
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島田
IT業界では今後も新しい技術が次々と登場し、進化し続けると思います。
そういった状況下では、採用はもちろんのこと、新人教育を含めた早期育成がますます重要になってくるでしょう。特に新人研修は、効果的かつ効率的に進めていかないと、様々な問題が生じる可能性があります。
これらの課題に対しては、TOASUさんと長年築いてきたパートナーシップを活かし、一つずつ解決していく必要があると考えています。
ShikakuPassについても、昨年から使い始めて2回目ということで、その有効活用の方法がだんだん見えてきました。新人だけでなく、既存社員のリスキリングにも活用できるのではないかと考えています。今後も様々な活用方法を検討していきたいと思います。